文楽 住大夫 大阪引退興行

文楽の竹本住大夫さんが大阪での引退興行を打ち上げたとのこと。

「文楽・竹本住大夫さん、万感の思い込め大阪最後の舞台」
桜丸と握手してる。桜丸は住大夫の胸に顔うずめて泣いたそうな。

先日、大阪までこの公演を見に行ってきた。観劇の関西遠征は昔はたまにしていたけれど、このところとんとご無沙汰だ。来月の東京公演のチケットが手に入らず、ならば!ということで思い切って行ってきた。

いいチラシだね。
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「菅原」の通し。気合入ってます。
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初めて文楽を観たのはいつだろ?
歌舞伎を見始めてから間もなくのはずだから、20数年は経っているか。
大幹部の越路大夫が引退してからまもなくだったと思うが、その頃から住大夫は浄瑠璃の第一人者であって、ずっと切り場を語っていた。

美声ではなくて、どちらかというとザラっとかすれた声。本人もよくインタビューでは悪声だと言ってた。でも、その低くて太い声が三味線に乗ってくると、まるで地の底から得体のしれない何かが這い出てくるような、そんな凄みがあるものでした。語りだしが好きだったな。

文楽はある種の暝さがあって、いい意味でそこが私は好きなのだが、まさにそんな別世界へ一瞬でワープさせてくれる。


国立文楽劇場は道頓堀近く「日本橋」にある。呼び方は「にっぽんばし」。
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演目は菅原の三段目の切。桜丸切腹の段。
平日だったが劇場は満席。当日券を求めて長蛇の列。人形は蓑助、文雀が出演、住大夫と合わせ人間国宝が3人もそろう大舞台。

ぶん廻し(大夫と三味線が乗る台)が回って住大夫が現れるとものすごい拍手。
こころなしか、ちょっとお顔が緊張気味であったような。ふかーく息を吐いて目をつぶっている顔を見ただけで目頭が熱くなる。

老いた百姓と腹を切る美しい息子。丁寧に丁寧に語ってゆく。
正直、全盛期の声量と迫力ではない。でも病後とあればそれは致し方ない。
それよりも一言一言、浄瑠璃の詞が訥々とひびいて、桜丸が切腹する「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・」は涙涙。
「自分は悪声で、覚えが悪くて、そんな自分を先輩方が辛抱強く稽古つけてくれた、ありがたい」と常々語る師匠の真面目なお人柄を感じる、いい舞台でした。

文楽は大阪のもん。近年は東京ではチケットは即完売に近いのに、地元大阪ではそれほどではないらしい。
橋元知事の一連のひっかきまわし騒動も悲しい限りだ。
「よくわからなかった、もっと現代的にしたほうがいい」という感想だったと聞く・・。わからないとかつまらないのはいいとして、基本的に古典に対して身を削って修業している人に対する敬意がなさすぎはしませんかね。なかなか公的な援助がなければ、こういう文化を残すのは大変なんだから。
住大夫さんも、さぞ心労があったことだと思う。

などと、ちょっと愚痴になってしまったが、
でも、後輩は着々と育ってきている。いまやスターといってもいい千歳大夫さんとか、若手の呂勢大夫さんとか。若いお客もかなり増えているでしょう。
住大夫さんも、おそらくはそういう若手にはこれからも稽古をつけていくんでしょう。
お体を大事にして、どんどん厳しく(?)稽古していただきたいと思います。
お疲れ様でした。東京公演も無事に勤められますように。円熟期を直に聴けたことは幸せでした。

また見に行こうっと!
by suo-suo | 2014-04-29 18:50 | 本とか芝居とか音楽とか


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